京都の南。宇治よりさらに南東。
未開の地と言っても言い過ぎではない程の山奥に、
かつて霊峰と呼ばれた「鷲峰山(じゅうぶさん)」という
南山城の最高峰がひっそりとたたずんでいる。
そしてその山頂付近には、人々に忘れ去られたような
古寺がある。
それが、「金胎寺(こんたいじ)」である。
金胎寺は、山岳霊場の拠点として7世紀終わりごろに開かれ、
大和の大峰山と並ぶ2大霊峰の一つとされている。
しかし、今や人の訪れることもまれな、
古びた山寺と言う様相を呈している。
この金胎寺、たどり着くには相当の山道を進んで
いかなければならない。
宇治市から宇治田原町の山道を抜け、
何処に通じているかもわからないような細い林道を
ひたすら登っていく。

途中、突然茶畑が広がったのには驚かされた。
こんな山奥にわざわざ茶畑を作らなくても…
さすが宇治と言うべきか…
その茶畑を過ぎると、程なく金胎寺の入り口に到着する。

車を停めて、坂道を登っていくと、山門が見えてきた。
ここが、金胎寺である。

歴史を感じさせる建物。
風情と言うよりは、朽ち果てた…というイメージが強い。
かつての栄華を思わせる面影はなく、
ただ静かに、ひっそりと時を積み重ねてきたような感じである。


1300年の歴史を誇るこのお寺も、
やがては自然と共に風化していく運命なのだろうか。
その建物の脇に、山頂へと通ずる小道がある。
この道にも草木が覆いかぶさっており、
押し分けながら進まなければならない。
頂上の明るみを目指して歩くこと5分、
山頂に立てられた、「宝篋院塔(ほうきょういんとう)」が
見えてきた。

ここにもまた人の気配はなく、
妙に大きく成長したトカゲと虫の音が迎えてくれた。
だが、この山頂からは、なんと遠く琵琶湖や比叡山が見渡せる。
ずっと山の中を走ってきたのに、
こんな遠くまで見渡せる眺望が広がっていることには驚かされた。
この景色が霊峰として崇められてきた所以なのだろう。
かつての修行僧たちも、人里離れたこの山寺までたどり着き、
この景色を眺めながら、鷲峰山という山の神秘を感じたのだろうか。

現代の車でなら、京都市内より1〜2時間の道程だが、
まともな道もない平安〜鎌倉時代の修行僧たちが歩いて
この険しい山に登って来たこの秘境の地で、
遙か先に、琵琶湖を眺め、比叡山を遠望できるこの場所を
霊峰として崇めた理由がここにあるのではないだろうか。
この金胎寺から行場巡りという、かつての修行場であるらしい、
山岳コースに行くことができる。

このお寺に貼られた写真を見る限り、
鎖で岩を登っている、スーパーデンジャラスアドベンチャーな
場所ではないだろうか。
残念ながら、ここに行けるのは2時までということで
今回は断念せざるを得なかったが、
我こそはという方は、是非チャレンジしてみてはいかがだろう。
非日常的な恐怖が味わえるに違いない。